朝日新聞 社説)延長国会 政権の都合むきだしだ
 延長国会最初の本格論戦だというのに、加計・森友問題の真相解明は全く進まず、重要法案や当面の政策課題をめぐる議論も深まらなかった。残る1カ月の会期を、政権が疑惑にフタをしたまま、問題の多い法案を強引に成立させる舞台にしてはいけない。   きのう参院予算委員会の集中審議があった。獣医学部新設をめぐり、加計学園の加計孝太郎理事長が記者会見して以降、初めて安倍首相が答弁に臨んだ。

 加計氏は愛媛県文書に記された2015年2月の首相との面会を否定、学園事務局長がウソを伝えたと説明したが、説得力のある根拠は示されなかった。  

 首相は改めて、加計氏との面会を否定。加計氏の会見内容については「政府としてコメントする立場にない」と繰り返した。一国のトップの言動が「捏造(ねつぞう)」されたというのに、このひとごとぶりには驚く。野党が求める加計氏の証人喚問にも、「国会でお決めになること」と、取り合わなかった。  

 森友問題でも、政権の後ろ向きな姿勢が際立った。 先週の参院決算委員会で、共産党議員が独自に入手した内部文書を明らかにした。

 財務省国土交通省のすり合わせを記したもので、学園との国有地取引をめぐるやりとりを「最高裁まで争う覚悟で非公表とする」、大阪地検の刑事処分について「官邸も早くということで、法務省に何度も巻きを入れている」などの記載があった。

 事実なら、見過ごせない大問題だ。  集中審議で石井国土交通相は、指摘から既に1週間がたっているというのに「出所不明で、体裁も行政文書とは思えない」などと答えるだけで、文書が本物かどうかの調査を確約することすらも避けた。首相がしばしば口にする「ウミを出す覚悟」はどこに行ったのか。

 一方で、きょうにも参院厚生労働委員会で与党が採決を強行しようとしている働き方改革法案について、首相は「多様で柔軟な労働制度へと抜本的に改革する70年ぶりの大改革」と自賛した。

 長時間労働を招かないか、高度プロフェッショナル制度の妥当性が問われていることなど、全く眼中にないようだ。

 政権・与党は、数々の問題点が指摘される「カジノ法案」や、与党の党利党略もあらわな参院選挙制度改革法案も、会期内に成立させる構えをみせる。

 熟議を通じ国民の懸念に応える。法案に問題があれば立ち止まり、必要なら修正を施す。それが会期を延長した政権・与党の責任だ。