青木理氏「2016年に検察は、林真琴氏を事務次官に就けようとしたが、官邸がこれを蹴り、政権に近い黒川弘務氏を据えた。法務事務次官検事総長につながる重要ポスト。検察は独立性の強い準司法機関なので、戦後の歴代政権もこんな介入はしなかった。前例のない異常事態です」 (@product1954)

以下、青木理氏論説の一部の転載です。

 検察トップ人事に介入するという異例の事態 ―― 

 検察は司法取引など強力な武器を手に入れたにもかかわらず、森友問題では財務省職員らを不起訴処分にするなど、政権にとって都合の良い判断を繰り返しています。

青木 

 検察も政権に忖度したのでしょう。もともと大阪地検は今年3月、国有地格安売却に関する背任容疑を不起訴処分とし、森友問題の捜査を幕引きするつもりだったようです。なぜかと言うと、山本真千子・大阪地検特捜部長が3月に異動することが決まっていたので、それに合わせて捜査を終了させようとしていたのです。ところが、3月2日に朝日新聞が公文書書き換えをスクープしたことで、山本氏の異動が延期になったのです。

 ここからは推測も含まれますが、現場検事たちは財務省から出てきた文書を精査する中、公文書改ざんに気づいたのでしょう。当然、現場は盛り上がる。しかし、検察上層部は捜査を潰そうとした。だから、捜査の幕引きと特捜部長の異動直前の時期、情報が朝日新聞にリークされたのではないか。  

 私の聞いたところでは、大阪地検が起訴を躊躇した理由は他にもあります。一つは、小沢一郎氏をめぐる陸山会事件と関係しています。この事件では、東京地検特捜部の検事が虚偽の捜査報告書を作成したことが大問題になりました。財務省の公文書改ざんも悪質ですが、捜査報告書も立派な公文書であり、捏造ともいうべき虚偽報告書の作成は極めて悪質です。ところが、当該の検事はこの件で不起訴処分となっています。  そのため、仮に財務省職員らを公文書改ざんで起訴すると、この点をほじくり返されかねません。検察としてこれは都合が悪い。だから今回の起訴も見送ったと明かす検察幹部もいるようです。要するに検察も財務省も目くそ鼻くそということでしょう。

 また、政権は法務・検察にも人事で介入し、法務・検察側に強い警戒感があります。2016年に法務・検察は、林真琴・刑事局長(当時)を事務次官に就けようとしました。しかし官邸がこの人事案を蹴り、政権に近いと言われる黒川弘務・官房長(同)を事務次官に据えたのです。

 法務事務次官検事総長につながる重要ポストです。そのため検察内部では、ついに官邸が検察トップ人事にまで介入したと衝撃が広がりました。検察は独立性の強い準司法機関ですから、戦後の歴代政権もこんな介入はしなかった。前例のない異常事態です。そうしたことが重なり、法務・検察でも政権への忖度が強まっているのでしょう。……